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2009年02月27日(金)更新

儲かる理由の「鮮度」

マーケティング・トルネードの佐藤昌弘です。

今の私は経営コンサルタントというのが仕事です。
しかし、コンサルタントになる以前は、自分で創業した
住宅リフォーム会社を経営していました。

泥臭い社長業を何年もやっていたからこそ、そのころの私は、
「コンサルタントに何がわかるもんか。口先だけのくせに。
 他人の世話焼いてねーで自分の心配してろ。ばかたりーが!」
と思っていたものです。

今は、私がそんな過去を持っているとは知らないクライアント顧客ばかり
ですから、逆にそう思われている立場かも知れません。
不思議な感じです。

しかし、第三者的な視点で、冷静に見ることが出来る良さもあるのです。
コンサルタントになって初めて気づけた事も多いのです。
今日はそんな話をしたいと思います。


さて、こういう仕事をしていますと、
世の中には、「うわっ、すげーなぁ。儲かってんなー」
と、びっくらこく企業に出会うことが、よくあります。

そういう会社は、確かに存在しています。

逆に、「どうしてこうも運が悪いのか・・・」と、
何か除霊でもしてもらったほうが良いのかもと、
冗談半分で思いたくなるほどツイてない会社もあります。

本当に確かに、そういう会社も存在してるのです。


コンサルタントになると、こうした貴重な活きた現場の
ケーススタディを数多く知ることができます。
数多くの事例に触れるからこそ、ある共通項に気づくこともあるのです。

では、儲かっている会社は、創業当初から激儲かりだったのか?
では、儲かっている会社は、未来もずっと激儲かりが続くのか?

私の過去の経験から言えば、NOだと思います。



江戸時代末期の「安政」と呼ばれた時代に創業されたという会社があります。
日本の元号で言えば、
「安政-万延-文久-辛酉-元治-甲子
     -慶応-明治-大正-昭和-平成」
となります。
おそろしく寿命の長い企業さんです。

長い歴史の間には、儲かっていた時期があります。
しかし今は、少々苦しんでらっしゃています。

長い歴史があれば安泰かというと、そうでもありません。
ご存知の通り、ウェッジウッドという老舗の陶磁器メーカーなどは、
事実上経営破たんしてしまいました。
長くやってれば良いというものでもないようです。


反対に、ずっと繁栄を続けている会社に共通しているのは
何かという視点で考えてみると、あることに気付きます。

具体的なクライアント顧客のケースは出せないので、
誰もが知っているケースでお話ししましょう。

あの、トヨタグループはどうでしょうか。
まぁ、今回の一件ではトヨタでさえ想像してなかった早さで
危機がやってきたようです。
しかし、もともとは自動織機という事業から、自動車部という
部署が出来て、それが別会社化してトヨタ自動車となっています。

織物を作る機械を作っていた会社から、自動車を作る会社が生まれたわけです。
おそらく近い未来には、ロボット産業へと発展を遂げようと準備を
しているのではないかなと個人的に想像しています。


同じようなケースを探せば数々あります。
DHCさんも、もともとはDaigaku Honyaku Centerという洋書の翻訳が本業でした。
そうです。あのサプリメントのDHCさんです。
今では健康食品から、エステ、スパ経営へ、さらには医薬品事業へ進出するなどの
広がりを見せていらっしゃいます。


つまり、私の考えでは、儲かる理由には「鮮度」があると思うのです。

儲かる理由の「鮮度」が落ちる前に、次の展開のための準備を始める。
織機の魅力が時代とともに薄くなっていく前に、自動車への準備を。
サプリメントの魅力が時代とともに薄くなっていく前に、医薬品への準備を。

この次への展開のための準備は、何年もかかるものもあれば、
明日からすぐに成果が現れるものもあります。


例えば、何世代も酒蔵を営んできた日本酒の酒造メーカーが、
お漬物を漬けるためのものとして販売していた「麹(こうじ)」を、
ある日、「お肌がピカピカになる生麹パック」として酒販店で売り始める。
これは、やる気になれば1週間で商品化できます。

こうした次への展開は、本当に即座に出来るものが多くあるのですが、
その着眼点を知らない会社が多いだけなのです。

もちろん、今の事業とは違う、新規事業へと参入するだけが
「鮮度」を維持する方法ではありません。
ある化粧品メーカーは、無添加化粧品から、ナノ技術を使った化粧品へと
その「鮮度」を変化させていきました。

別に、既存事業と分野の違う新規事業に参入したわけではありません。
化粧品事業をずっと継続させています。

キティちゃんも、ずっとキティちゃんですが、鮮度を保つように変化
をしていますよね。

「変化が大切」とは、頭では理解していましたが、
こうした「鮮度」の維持という別の言い方をしても、
理解が進むと思ったのです。

繁栄し続けている企業の中で、ずっと変化せずに済んでいる会社を
探すほうが、やはり難しいことをいまさらながらに気づいたのです。

特別なことを言っているわけではないことは、理解しています。
しかし、奇をてらわず、基本的なことも思い出していただく事も
大切だと思いました。

あなたの会社に対しての顧客からのニーズは、
果たして10年前とまったく同じでしょうか。
その「鮮度」の変化はゆっくりですが、確実に起きているはずです。
自社内をよく観察してみてください。

そこに大きなチャンスがあることが多いからです。



株式会社マーケティング・トルネード
代表取締役
satou

2009年02月20日(金)更新

超・自然体での新規事業立ち上げ

マーケティング・トルネード一條です。

先日、弊社の近所で桜が咲いているのを見かけました。
早く咲く種類なのでしょうか。少しずつ高くなってきた
太陽の光に照らされている薄いピンクの花びら。
なんだか春を先取りした気分になれました。

さて、今回は、新規事業の立ち上げ方についてお話をすると言いました。

ちょうど、新しいクライアントさんから、新規事業の立ち上げ
についての相談を頂いているので、ご紹介します。


この会社さんは地元で55年間、工務店を続けてこられた会社さんです。

これまでは、ゼネコンさんや、地元の別の工務店さんからの
仕事の請負が売上の柱だった。

しかし、請負にばかり頼っていると怖いので、自分でお客さんから
仕事を受ける新規事業をスタートさせたい。

どうすればいいのかという相談を頂いたわけです。


■ 超・自然体の新規事業スタート


世の中には、たくさんの、『新規事業立ち上げノウハウ』があります。

新規事業というと、「新しいことをするのだ!」という
決意に満ちた顔をされる社長さんもいらっしゃる。

相当の気合いを入れて、全力で新しい取り組みにぶつかっていく。
こういう方法がうまくいくこともあると思うのです。


でも、あえて私は、少し肩の力を抜いた
【超・自然体での新規事業の立ち上げ】をお勧めしています。

そうすることで、『そもそもムリな事業』に手を出さなくても
よくなるからです。


■ 御社の中にある資源を徹底活用!


この【超・自然体での新規事業立ち上げ】のやり方は、とても簡単。
下記の3つのステップで完了です。

 ◆ステップ1.
  まず、これまでのお客さんのリストを出してくる。

  この中には、既存のお客さんもいれば、見込みはあったけど
  まだ買ってくれていないお客さんもいてOKです。

  可能であれば、リストは紙で用意できるとなおさらGOODです。


 ◆ステップ2.
  そのリストをペラペラとめくりながら、次の質問に答えてみる。

  「この人・会社から問い合わせを受けたけど、断ったことは何だった
   だろうか?」

  どんな会社でも、5つくらいは、『問い合わせを受けたけど断ったこと』
  があるはずです。
  多い会社になると、10とか、20とかになることもある。
  それでOKです。
  お客さんのリストをめくりながら、出せるだけ出してみて下さい。

 ◆ステップ3.
  上記の2で書きだした項目を見ながら、『今、すぐ出来ること』
  は何かを考えて、やってみる。


これだけです。


このプロセスを行った結果、ある建材屋さんは、
入浴剤用に【ヒノキの削りクズ】を販売することになりました。

法人に文房具を届けていた文房具屋さんは、
引っ越し用に【自社のミニバン】を、貸し出すようになりました。


いずれも、これまで問い合わせを受けてはいたけれど、
断り続けてきた内容が新規事業になったのです。


建材屋さんはそれまで、通りがかりの人から「このヒノキの
削りクズ、ちょうだいよ」と言われていたのを断っていました。
ヒノキの削りクズなんて、ゴミだと思っていたからです。


文房具屋さんは、時々、「このミニバンって、借りること出来ませんか?」
と聞かれていたのを、断っていました。
だって、自分たちは文房具屋さんであって、レンタカー屋さんではないからです。


しかし、です。

そもそも、お客さんは、
【自分が欲しいものをドンピシャで扱っている会社】
があるのであれば、その会社に問い合わせをしているはずです。

また、もしも御社が、
【そのお客さんが欲しいものをゼッタイに扱っていなさそうな会社】
に見えるなら、問い合わせすら受けていないはずです。


つまり、御社がこれまでに「これ、出来ない?」と聞かれたけれど
断ってきた内容は、

・それを扱うドンピシャの会社がなく
・かつ、御社に扱えそうな商品・サービス

であるわけです。


当然、競合もいない。

まさに、新規事業天国です。


もちろん、少しばかりのアレンジは必要かも知れません。
上記でご紹介した建材屋さんは、これまで捨てていたヒノキの
削りくずを、冷凍ミカンが入っているようなナイロンの網袋に入れました。

文房具屋さんは、お客さんにミニバンだけを貸すのではなく、自社スタッフ
が運転をするという条件で、【運転手つきミニバン】を貸し出すようになりました。
文房具の配達がない日だけ、の限定です。


しかし、大きな初期投資はかからない。

結果、最小のコストで新しい事業が立ち上がっていったのです。


最初は小さな一歩かもしれません。
しかし、どんなに小さくても、芽さえ出れば、それでいい。

1あるものを100にするノウハウはいくらでもあるからです。

けれど、0を1にするのはとても難しい。
だからこそ、
『これまでに問い合わせを受けたけど、断ってきたこと』
を確認してみるのです。



ただやみくもに広告やチラシを使ったパワーマーケティングを考える前に。

新規事業を始める際には、是非、思い出して頂きたいと思っています。



冒頭でご紹介した工務店さんには、今の事業を伸ばすアイデアと一緒に、
「これまで問い合わせを受けたけど断ったこと」の棚卸しを
アドバイスしました。

どんな結果が出るか?
あっという間に立ち上がっていく新規事業のネタが
見つかるかも知れません。

またこのブログでもご紹介していきますね。




マーケティング・トルネード
一條仁志

2009年02月13日(金)更新

お客さんは、いったい誰?

いつもご愛読ありがとうございます。
マーケティングトルネードの巽です。

先日、サイトリニューアルを検討しているという方からご相談がありました。
ある教材をネット販売しているそうなのですが、サイトの開設以来、
注文が全くないのだそうです。

本人いわく、売れない理由が分からない。
だからリニューアルを繰り返すといった悪循環で、
これまでにかかった費用は数百万円に及ぶそう。
このままでは資金が底をついてしまうということで、
お問い合わせをいただいたようでした。


確かに、実際のサイトを見てみると、素人さんが作った外観ではありません。
デザイン処理もなされていて、写真素材等のクオリティも悪くない。
素人目からすると、儲かっていそうな雰囲気さえするサイトでした。


しかし、私にはどうしても引っかかることがありました。
それは、誰にとって役立つ商品なのか、全く理解できなかったからです。

そこで私は、単刀直入にこう聞いてみました。
「ところで、誰に向けてのリニューアルのご予定なんですか?」

すると、帰ってきた答えは、
「誰というより、売上アップのためのリニューアルです。」


この時点で私は、「今はまだ、その時期ではないな。」と感じました。
というのも、誰のために作るサイトなのかを把握できていない状況では、
売れるホームページなど作れるはずがないからです。

ネットマーケティングをうまく機能させるには、

1.自分のお客さんは誰なのか
2.彼らは何を求めているのか
3.自分はお客さんにどのようなメリットを提供できるのか
4.その根拠は何なのか?

を1セットで考える必要があります。

つまり、「自分のお客さんは誰なのか」の特定こそが、
全ての始まりだといっても過言ではないのです。

もちろん、それは仮定であっても構いません。
何事も試行錯誤はつきものです。

大切なことは、自分がいま取り組んでいることが、
上記のセットのどの部分に該当することなのかを強く意識すること。
それだけで、見当はずれなリニューアルの誘惑から免れることができるはずです。


ちなみに、冒頭のご相談者さんのリニューアルは、丁重にお断りしました。
なぜなら、今の彼に必要なことは、リニューアルではなく
自分のお客様が誰なのかを知ることだからです。

弊社にお金を使っていただければ、確かに弊社は儲かりますが、
もう2度と、同じ間違いを繰り返してほしくなかったのです。

けれども、もし彼が「●●の人のためにリニューアルをしたいんです」と
声をかけてきてくれたなら、その時は喜んでお手伝いしたいと思います。


株式会社マーケティングトルネード
巽大平

2009年02月05日(木)更新

高いのに買ってしまう消費心理

こんにちは。
マーケティング・トルネード佐藤です。


先日、ある出版社さんから取材を受けました。


その中で、
「価格が高いのに、買ってしまう」
こうした消費の心理についてのご質問がありました。

高いのに買うのは、なぜか?
そういった人間心理への関心は、誰でも抱きます。
それがわかれば、高く売ることが出来ると思うからでしょうか。

さて、その心理は、どういったものだと思われますか?


その取材の時に、私は、
「価格が超激安なのに、買わないという人もいますよね。
 それと一緒ですよ」
と答えてみました。

禅問答みたいになって面白いかなと思ったんです。

でも、出版社さんは「???」となってましたので、
面白くはなかったようです(苦笑)
あんまりやると怒られるのでやめました。


確かに、世の中にはびっくり仰天の高額商品があります。
エルメス(HERMES)の、バーキン(Birkin)なんて
500万円などという庶民的とは決して言えないバッグです。
それでも買う人はいます。

今日は、そんな価格についての話です。


ご安心を。ここでは、禅問答はしません。
そのかわりクイズです。
次の2つの会社(A社)と(B社)の、どちらから買いますか?


A社:トヨタクラウンG 平成18年式 走行40000キロ 無事故 白 250万円
B社:トヨタクラウンG 平成18年式 走行41000キロ 無事故 白 255万円


さて、どちらから買うでしょうか?


こう質問をすると、ほとんどの方が「そりゃA社でしょうよ」
という顔をされます。
だってね、同じ条件で走行距離が短いほうが安いっていうのなら、
そりゃそっちのほうが良いですよね。

なんだかね、新しくて安いって言うのなら、私もA社を選びます。

これは普通の反応ですし、当たり前の判断だと言えます。
それでいいんです。



A社:トヨタクラウンG 平成18年式 走行40000キロ 無事故 白 250万円
   前オーナー:暴走族
B社:トヨタクラウンG 平成18年式 走行41000キロ 無事故 白 255万円
   前オーナー:内科医の奥様


さて、これならどうですか?
A社と、B社、あなたならどちらの車を買われますか?

あなたの反応は、きっと「迷うなぁ・・・」か、「B社だなぁ」と
なっているかも知れません。


なぜ?


さて、これが、価格のメカニズムのひとつなのです。

価格を提示する直前までに、どれだけ適切(有利)な情報を
提供できているかが大事なのです。
それによって「高い」とか「安い」とかいう、主観など、
どうにでも操作されてしまうことがあるということです。


追伸
コンビニで、うまい棒1本10円。
私は迷わず買ったりします。

けど、小学校2年生が、私の横で悩んでました。
「10円かぁ。高いなぁ」

高い安いは、買う人によって違いますね。
10円で悩む姿が可愛かったです。


株式会社マーケティング・トルネード
代表取締役
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