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イヤなお客さんと付き合わなくてもすむ方法

投稿日時:2009/08/04(火) 18:42rss

いつもありがとうございます。
マーケティング・トルネードの巽です。

今回も、クライアントさんからご相談頂いた
事例を紹介してみたいと思います。


石川県で、浴槽の再生事業を専門にされている、
バスメイクの津田さんというクライアントがいます。

浴槽の再生事業とは、早い話がお風呂周りの修理屋さん。
でも、普通の修理屋さんとは、ちょっと違うんです。

旅館やホテル、賃貸物件など、何十年間も利用されて老朽化した浴室や、
すでに修理の施しようがないほどに損傷してしまった浴槽本体を、
特殊な再生技術を使って、まるで新品と見間違えるような
補修作業してしまうエキスパートなのです。


老朽化した構造物の浴室は、その形状や材質、場所によって
リフォームではどうにもならないような物件もあります。

しかし、バスメイクさんの手にかかれば、
浴室全体のリフォームをするよりも格段に安い価格で補修ができるうえ、
「他社でサジを投げられた案件」でも何とかしてもらえるという、
いわばお風呂周りの「匠」といっても過言ではない存在です。


ところがこの津田さん、
施工実績で県内ナンバー1の実績を誇るエキスパートであり、
その技術力も施工数も申し分ないのですが、そこはやはり職人さん。


「素晴らしい商品を持っている人に限って売るのが下手」という法則にもれず、
思うように集客ができずにいました。


そんな津田さんの目下の課題は、法人客探しでした。
つまり、ビジネスパートナー探しです。


けれども津田さんには、どうしても譲れない部分がありました。
それは、「下請けなんだから、元請けの言うことは何でも聞け」
というような業者とは付き合いたくないということでした。


そこでまず津田さんは、

・無理な工期には応じられません。
・下請なんだから何でも言うことを聞け、という方とは仕事しません。
・法外な値引き要求には応えられません。

こうした断りを、自社の案内にしっかりと明示することにしたのです。
つまり、イヤなお客さんとは付き合わないことを宣言したのです。


そんな津田さんのもとに、大きなチャンスが舞い込みます。
この契約が無事にまとまれば、今後の仕事がかなり安定するとのこと。
どうしてもモノにしたいということで、ご相談をお寄せいただいたのです。


おおまかな交渉のコツは別にアドバイスをさせていただいたものの、
津田さんが特に心配されていたことは、
「あんなことを書いたら、高圧的な態度だと取られかねないのではないか?」
「意図せず、横柄なヤツだと思われてしまうのではないか」
というものでした。

「あんなこと」とは、前述の自社の案内に掲載した「宣言」です。


たしかに津田さんは根っからの職人さん。
メールの文面は簡素だし、話し方もちょっとぶっきらぼう。
津田さんのことを良く知らない人からすると、
ちょっと気難しそうなイメージを持たれているかもしれませんでした。

そこにあの宣言です。
相手方に、あらぬ誤解を生んでしまう懸念はありました。


しかし、津田さんの思いも承知していた私は、
ほんの少しだけ書き加えていただくことにしました。
たとえば、こんな風です。

・主張=無理な工期には応じられません。

・理由=なぜなら、無理な工期を約束してしまったがゆえに、
    工事のクオリティを落とすことは本意ではないからです。
    また、それでお客様に喜んでいただけない結果になってしまったら、
    あたなにとっても私にとってもお客さまにとっても不幸だからです。

・エピソード=事実、こういうことがあったんです。
あれは3か月前のことです。
       ●●という団地の浴槽修理をした際、・・・。


つまり、それぞれの宣言を、
【宣言(主張)】+【理由(根拠)】+【エピソード(裏付け)】
というセットにして、書き直していただくことにしたのです。


それから連絡がなくなった津田さんの結果がどうだったのかは分かりません。

しかし、どれほど言葉を尽くしても、100%の思いを届けることは
できません。だからこそ、あなたはあなたの思いを伝えることに、
最善を尽くしてほしいのです。

「イヤなお客さんと付き合わなくていい方法」は、
「自分に期待を寄せてくれるお客さんに精一杯応える方法」
でもあります。

あなたの発するメッセージは、誤解なく相手方に伝わっていますか?



追伸:
それから2か月ほどたった今日、突然のメールが届きました。

「以前ご相談させていただいた、●●県営住宅の浴室修繕の件ですが、
 お陰様で今日契約となりました。本当にうれしいです。 」

言葉少なに書かれたそのメールは、相変わらず職人さんのそれでした。
しかし、わたしにとっては何物にも代えがたいものでもありました。

まずはおめでとうございました。
この場を借りてお祝い申し上げます。


株式会社マーケティングトルネード
巽大平

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